NIST CSF とは

NIST Cybersecurity Framework(CSF) は、米国国立標準技術研究所(NIST)が策定したサイバーセキュリティリスク管理のフレームワークです。2014年にv1.0が発表され、2024年2月にv2.0に改訂されました。

特定業種に依存せず、中小企業から大企業・政府機関まで幅広く活用できる点が特徴です。日本でもIPAがガイドラインの参考として推薦しています。

CSF 2.0 の主要変更点

2024年のCSF 2.0では「Govern(統治)」機能が新たに追加され、5機能から6機能に拡張されました。これにより経営層の責任とサプライチェーンリスク管理が強調されています。

6つのコア機能

1. GOVERN(統治)— CSF 2.0 新機能

セキュリティリスク管理の方針・手順・役割・責任を定義します。

  • セキュリティ戦略とリスク許容度の決定
  • 経営層のサイバーセキュリティへの関与
  • サプライチェーンリスク管理
  • ポリシー・標準・手順の整備

2. IDENTIFY(識別)

組織が管理する資産・リスクを把握します。

  • 資産管理(ハードウェア・ソフトウェア・データ)
  • リスクアセスメントの実施
  • 脅威インテリジェンスの活用
  • ビジネス環境・法的要件の理解

3. PROTECT(防護)

重要サービスの継続を確保するための対策を実装します。

  • アクセス制御・最小権限
  • セキュリティ意識向上トレーニング
  • データ保護・暗号化
  • 情報保護プロセスとシステム
  • 設定管理・脆弱性管理

4. DETECT(検知)

サイバーセキュリティイベントの早期発見を可能にします。

  • セキュリティ継続的監視
  • 検知プロセスの整備
  • アノマリ・イベントの検知

5. RESPOND(対応)

検知したインシデントへの対応活動です。

  • インシデント対応計画(IRP)の実行
  • 通信(ステークホルダーへの通知)
  • 分析・根本原因の特定
  • 軽減策の実施

6. RECOVER(回復)

正常運用への復旧と学びの反映です。

  • 復旧計画の実行
  • 改善点の特定と実装
  • ステークホルダーへのコミュニケーション

実装ティア(成熟度レベル)

CSFは4段階の実装ティアで組織の成熟度を評価します。

NIST CSF 実装ティア
ティア名称特徴
ティア1Partial(部分的)リスク管理がアドホックで非公式。認識が限定的
ティア2Risk Informed(リスク認識)リスクを認識しているが、組織的なプロセスなし
ティア3Repeatable(再現可能)公式なポリシーとプロセスが存在。定期的に更新
ティア4Adaptive(適応的)継続的な改善。脅威インテリジェンスを活用して動的に対応
すべての組織がティア4を目指す必要はない

CSFのティアは「高ければ良い」ではなく、ビジネスリスクと適切に対応することが目標です。中小企業がティア2〜3でも、リスクを適切に管理していれば十分なことがあります。

CSF プロファイルの活用

プロファイルは組織の「現在の状態(Current Profile)」と「目標状態(Target Profile)」を定義します。ギャップ分析によって優先度の高い改善施策を特定できます。

現在の状態(Current Profile)
  ↓ ギャップ分析
目標状態(Target Profile)
  ↓ ロードマップ作成
優先度付きの改善施策

MITRE ATT&CK との組み合わせ

NIST CSFとMITRE ATT&CKは補完関係にあります。

NIST CSF 機能MITRE ATT&CK の活用
IDENTIFY脅威インテリジェンスで攻撃者のTTPを把握
DETECTATT&CKテクニックに対応するSIEM検知ルール
RESPONDATT&CKのプロシージャを参照して対応手順を策定

2025〜2026年の関連動向

国際規制との整合

2025〜2026年にかけて、NIST CSF 2.0は国際的な規制フレームワークとの整合が進んでいます。

規制概要CSFとの関係
EU NIS2指令重要インフラ事業者へのサイバーセキュリティ義務化。初回監査期限は2026年6月30日CSFのGovern/Protect/Detect機能がNIS2のリスク管理要件にマッピング可能
EU DORA金融セクター向けデジタルオペレーショナルレジリエンス規制CSFのRecover機能とDORAのICTリスク管理・報告要件が対応
CMMC 2.0米国防総省契約者向けサイバーセキュリティ成熟度認証NIST SP 800-171に基づき、CSFと共通のコントロール体系

NIST IR 8286 改訂とCSF 2.0との連携

2025年12月、NISTはIR 8286シリーズ(サイバーセキュリティとエンタープライズリスク管理の統合)を改訂し、CSF 2.0との整合性を強化しました。これにより、CISOが経営層にリスクを報告する際のフレームワークが統一されています。

AI向けCSFプロファイル

2026年1月、NISTはCybersecurity Framework Profile for Artificial Intelligence(Cyber AI Profile) のドラフトに関するワークショップを開催しました。AI固有のリスク(モデルの汚染、プロンプトインジェクション、データポイズニング等)をCSFの6機能にマッピングするためのガイダンスです。

CSF 2.0 は2年連続で最も活用されるフレームワーク

2025年の調査で、NIST CSFは2年連続で「最も価値があると評価されるセキュリティフレームワーク」に選ばれました。業種・規模を問わず適用できる柔軟性と、Govern機能追加によるガバナンス強化が評価されています。


理解度チェック

NIST CSF 2.0 で追加された新しいコア機能はどれですか?